ご本人の認知症の進行に伴い、住宅型有料老人ホームへの入居が可能か確認を進めている状況です。
この記事でわかること:
- 認知症の状態ごとの受け入れ基準
- 外部サービスを利用する仕組みと費用
- 見学時に確認すべき具体的なポイント
認知症の症状があっても住宅型有料老人ホームに入居できるか
施設による受け入れ基準の違い
住宅型有料老人ホームにおける認知症の方の受け入れ条件は、法律や制度で統一された明確な基準がありません。運営会社や個別の施設ごとに独自の入居規定が設けられています。認知症の診断を受けていること自体が入居の拒否理由にならない施設は数多く存在します。

受け入れの可否を左右するのは「どのような症状が生じているか」という点です。例えば、日常的な声かけで落ち着く物忘れ程度の症状であれば、多くの施設で入居手続きが進められます。しかし、夜間の徘徊や他者への暴言・暴力行為、火不始末といった行動・心理症状(BPSD)が見られる場合、対応体制の有無によって判断が分かれます。
施設ごとに夜間の配置人員や施錠設備の仕様が異なるためです。出入り口がオートロックで施錠され、夜間も複数のスタッフが巡回する施設では、軽度から中度の徘徊に対応できる傾向があります。ご本人の具体的な症状と、施設側のケア環境が合致しているかが決定の要素となります。
軽度から重度までの対応範囲
認知症の初期段階である軽度認知障害(MCI)や要介護1程度の段階では、住宅型有料老人ホームでの生活において大きな支障が生じるケースは少ないといえます。日中の身の回りの動作がある程度自立していれば、見守りや服薬管理の支援を受けながら過ごすことが可能です。
中度から重度の要介護状態へ移行すると、必要な介護量が増加します。排泄や入浴に全介助が必要な状態であっても、外部の介護サービスを組み合わせることで継続して入居できる施設は存在します。しかし、自分の居室が分からなくなって他人の部屋に入り込んでしまう行為や、大声を出し続けてしまう状態が頻繁に起こると、共同生活の維持が難しくなる場合があります。
また、重度化に伴い経管栄養やインスリン投与などの医療的ケアが日常的に必要となった際、看護師の常駐時間や提携クリニックの往診体制によっては別の住まいや医療機関への転院を検討するケースもあります。認知症の進行段階に応じてどこまで対応できるかは、入居を検討する初期の段階で各施設に聞き取りを行う選択肢があります。
外部の介護サービスを組み合わせて生活する仕組み
訪問介護やデイサービスの利用方法
住宅型有料老人ホームは、原則として「住居の提供」と「生活支援(食事の手配や清掃など)」を行う施設です。介護付き有料老人ホームとは異なり、施設の直接雇用スタッフが手厚い身体介護を24時間体制で提供する構造にはなっていません。

そのため、介護が必要になった場合は、ケアマネジャー(介護支援専門員)にケアプランを作成してもらい、外部の介護事業者と個別に契約を交わします。具体的には、居室で入浴や排泄の介助を受けるための訪問介護や、機能訓練や交流を目的に通う通所介護(デイサービス)を利用します。
住宅型有料老人ホームの敷地内に訪問介護事業所やデイサービスが併設されている施設も存在します。併設の事業所を利用すると、移動の手間が省け、施設スタッフと介護スタッフの情報共有が行き届きやすいという側面があります。外部の事業者を自由に選べる点も住宅型有料老人ホームの特徴です。
介護度が上がった場合の負担の変化
認知症が進行して要介護度が上がると、1日の中に組み込む介護サービスの回数や時間が増加します。介護保険制度では、要介護度ごとに1ヶ月あたりで利用できるサービスの限度額(区分支給限度基準額)が定められています。
2026年8月時点における、要介護度ごとの区分支給限度基準額および自己負担1割の場合の目安額は以下の通りです。
| 要介護区分 | 区分支給限度基準額(単位) | 1ヶ月の支給限度額の目安 | 自己負担1割の目安金額 |
|---|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 | 約50,320円 | 約5,032円 |
| 要支援2 | 10,531単位 | 約105,310円 | 約10,531円 |
| 要介護1 | 16,765単位 | 約167,650円 | 約16,765円 |
| 要介護2 | 19,705単位 | 約197,050円 | 約19,705円 |
| 要介護3 | 27,048単位 | 約270,480円 | 約27,048円 |
| 要介護4 | 30,938単位 | 約309,380円 | 約30,938円 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 約362,170円 | 約36,217円 |
※1単位=10円で計算した2026年8月時点の一般的な例です。地域区分により単価は若干異なります。正確な金額はお住まいの自治体でご確認ください。
限度額の範囲内であれば、所得に応じた自己負担割合(1割から3割)の支払いで済みます。しかし、昼夜を問わない見守りや頻繁な訪問介護が必要になり限度額を超えてサービスを利用した場合、超えた分の費用は全額自己負担(10割)となります。要介護度が高くなった際のケアプランと費用の見通しについては、ケアマネジャーと定期的に協議する方法があります。
入居にあたって必要となる費用と月額の目安
家賃や管理費などの基本費用
住宅型有料老人ホームへ入居する際は、施設へ直接支払う基本費用が毎月発生します。主な内訳は、居室の家賃、共用部分の維持管理や人件費にあてられる管理費、提供される食事代、居室の水光熱費です。
月額の基本費用の合計は、立地や建物の設備、サービスの質によって変わりますが、一般的な目安としては月額15万円から30万円程度となります。都心部や設備が充実した施設では月額30万円以上になる場合もあります。
また、月額費用とは別に、入居時に「入居一時金(敷金・償却金)」を支払う施設があります。金額は0円の施設から数百万円、数千万円まで多様です。一時金を支払うことで月々の家賃が減額されるプランを用意している施設もあります。解約時の返金ルール(初期償却割合や償却期間)について契約前に確かめておくことが推奨されます。
外部サービス利用に伴う自己負担額
基本費用に加えて、前述した外部の介護保険サービスを利用した分だけ自己負担額が発生します。65歳以上(第1号被保険者)の方の自己負担割合は、本人の合計所得金額に応じて1割、2割、3割のいずれかに決定されます。なお、40歳から64歳まで(第2号被保険者)の方は、特定疾病(末期がん、関節リウマチ、初老期認知症など16種類)が原因で要介護認定を受けた場合に限り対象であり、申請時には医療保険証が必要です。
1ヶ月の介護サービス利用料の自己負担額には、所得に応じた上限額(高額介護サービス費制度)が設けられています。
2026年8月時点における、世帯ごとの月額上限額の区分は以下の通りです。
| 所得区分 | 世帯の月額上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円以上(年収約1,160万円以上) | 140,100円 |
| 課税所得380万円以上(年収約770万〜約1,160万円) | 93,000円 |
| 一般(上記以外・課税世帯) | 44,400円 |
| 市区町村民税非課税世帯 | 24,600円 |
| 市区町村民税非課税世帯(老齢年金受給額80万円以下など) | 15,000円 |
※同じ世帯内で介護サービスを利用している人が複数いる場合は合算できます。2026年8月時点の基準です。自治体によって細部が異なる場合があるためご確認ください。
住宅型有料老人ホームでの毎月の総支払額は、「施設への基本費用(約15万〜30万円)」+「介護サービスの自己負担額(約1万〜4.4万円程度)」+「医療費・日用品費(約1万〜3万円)」を足し合わせた金額になります。全体でおよそ月額20万円から35万円前後の予算を見込んでおくことが標準的な目安です。
見学の際に確認しておくべき具体的な項目
スタッフの認知症ケアの経験と体制
住宅型有料老人ホームの見学時には、建物設備だけでなく現場で働くスタッフの配置状況やスキルを確認します。パンフレット上の「認知症対応可能」という表記のみで判断せず、実際の支援体制に踏み込んで質問を重ねることが有効です。

着目したい点として、「認知症介護実践者研修」や「認知症ケア専門士」などの資格を持つスタッフが在籍しているか、全社的な研修体制が整っているかが挙げられます。知識を持つ職員がいる施設では、認知症特有の不安や混乱に対して適切な声かけや環境調整を行う対応力が期待できます。
また、夜間の勤務人員も見逃せない要素です。夜間に常駐するスタッフが1名のみの配置である場合、複数のお部屋から同時に呼び出しがあった際や、夜間の徘徊に対する見守りに限界が生じる可能性があります。夜間の巡回頻度や、緊急時の対応マニュアルについて担当者へ問いかけておくと状況が把握しやすくなります。
医療連携や看取りまでの対応方針
認知症の進行に伴い、服薬管理が複雑になったり、自力で食事を摂ることが難しくなったりする変化が訪れます。そのため、施設が連携している医療機関の診療科目や訪問頻度を確認します。
具体的には、精神科や神経内科の専門医による訪問診療が受けられるか、24時間体制で往診に対応してくれる体制があるかを確かめます。認知症に伴う周辺症状が急激に変化した際、提携医療機関とスムーズに連絡を取り合い、服薬調整などの初期対応が行える環境が助けとなります。
あわせて、将来的に認知症が重度化した場合や、誤嚥性肺炎などで最期の時を迎える段階(終末期)になった際、施設内で「看取り」まで対応可能かを聞き取ります。医療ケアの対応限界により退去を求められる基準(例えば、胃ろうや静脈点滴の常時管理が必要になった場合など)の条件を把握しておくことで、将来の選択肢を明確にできます。
受け入れ可否を確認するための相談手順
ケアマネジャーを通じた情報収集
入居検討の最初のステップとして、現在担当している居宅介護支援事業所のケアマネジャー、または地域包括支援センター(市区町村が設置する高齢者の総合相談窓口)へ相談を行います。

専門職であるケアマネジャーは、地域の住宅型有料老人ホームに関する特徴や、過去の受け入れ実績などの情報を保持しています。ご本人の認知症の進行具合(要介護度、長谷川式スケールなどの検査値、日中の行動傾向)を伝えることで、現在の状態を受け入れ可能な施設を絞り込んでもらえます。
また、ケアマネジャーを通じて気になる施設へ連絡を入れてもらうことで、個別に1件ずつ確認するよりも効率よく受け入れ可能性の感触を掴むことができます。候補となる施設がいくつか挙がったら、パンフレット等の資料を取り寄せて比較を行います。
施設への状況伝達と事前面談の進め方
見学や面談の申し込みを行う際は、ご本人の現在の身体状況や認知症の症状を可能な限り詳しく、正確に施設側へ伝えます。状態の良い側面だけでなく、夜間の睡眠状況、過去に発生したパニックや徘徊の有無、苦手な環境などの情報を開示することが、入居後のミスマッチを防ぐ手立てとなります。
具体的には、主治医が作成した「診療情報提供書(診断書)」や、直近で利用している「介護サービス計画書(ケアプラン)」、デイサービスでの様子が書かれた連絡帳などを提出します。施設側の相談員や看護師は、これらの書類をもとに一次的な受け入れ判断を行います。
書類確認の後は、実際の入居判定に向けた「面談(本人面接)」が行われます。施設の担当者が自宅や病院、ショートステイ先を訪問し、ご本人と直接面話して動作やコミュニケーションの状況を確認します。なお、面談時の申請書類等における押印は原則不要となっている自治体や施設が増えていますが、一部で確認を求められる場合もあるため、案内に沿って手続きを進めます。
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